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食品リスクと管理栄養士

 食品の放射性物質による汚染は、東北の生産者の方々はもちろん消費者である私たちにも未だに大きな影響を与えています。震災直後は情報が混乱し、福島県産の食材の取り扱いが中止されたり、非常に安い価格で取引されたりしました。食品の専門家をめざすみなさんも大きな関心を寄せていることと思います。

 そもそも、放射線のリスクはどれくらいのものなのでしょうか。国立医薬品食品衛生研究所の安全情報部第三室長の畝山智香子さんが著書『「安全な食べもの」ってなんだろう?――放射線と食品のリスクを考える』のなかで放射線の発がんリスクとほかの発がん物質リスクとの比較をしています。

 リスクの比較に際しては、摂取量に比例してリスクが上がる発がん物質の指標として、発がんのスロープファクター(SF)を用いています。スロープファクターでは、用量を横軸に、発がん影響を縦軸にして原点に向かって引いた直線の傾きで発がん性の強さを表します。放射線も発がん物質と同じように被曝量に応じてリスクが上がるため、同じような概念である国際放射線防護委員会(ICRP)のリスク係数を用いています。

 この試算によると、食品中で発がんリスクが最も高いのはヒ素です。放射能による影響と比較すると20mSvくらいのリスクと同じくらいになります。ヒ素はお米や海産物(とくにヒジキ)に多く含まれていますが、だからといって全く食べないということは不可能です。ほかにも炭火焼きなどでできる焦げに含まれるベンゾピレン、カビ毒の一種であるアフラトキシンもリスクが高いことがわかります。

 畝山さんも書いているように、「私たちが毎日食べているものは、もともと安全性が確認されたり保証されたりしているものではなくて、未知の、膨大なリスクのかたまり」なのです。私自身この基本を忘れ、放射線、放射性物質という未知のものに対して、漠然とした不安を感じていたこともありました。放射線も数ある食品のリスクのなかの一つ。さまざまなリスクを出来るだけ正確に知り、食品を摂取するメリットとデメリットを検証しながら、全体として少しでもリスクを下げる現実的な方法を見つけていくことが必要です。そして、情報が混乱しているとき、一般の消費者が不安になっているときこそ、リスクについて不確実性も含めて正確にわかりやすく伝えていくことができる管理栄養士さんの力が求められるのではないでしょうか。

〜2012年ほけもし第3回より〜

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