澤崎 明美

女性医師の男選び

 私は現在、障害児クリニック、東洋医学系診療所、内科一般外来、大学病院研修、などの外勤先を日ごとに行き来する身です。人は何故病むのか、というようなことを考えていたら、ふと気がつくとこのような勤務体制になってしまいました。働く先々で患者さんは増え、職員の相談ごとも多く、女性医師というのは組織の陰の支え役であると実感するこの頃です。
 齢40台後半ともなると、同僚女医の悩みを打ち明けられることも多く、その多くが家庭の問題をはらんでいます。
 そもそも医者をするようになって、女性の人生について気がついたことがあります。女性というのは結婚後に体質が変わることが往々にしてある、ということです。ある人は結婚して子供を生んで虚弱だった体質が変わりどんどん丈夫になったとか、また反対に、結婚してから、それまでは丈夫だったのが病気がちになった、または性格が変わって暗くなった、などなど。これはどういうことなのだろう、とずっと思っていました。そして同業の同性の仲間についても、結婚後どんどん出世していく人と、結婚後苦労が絶えない女医がいるのです。
 私たちは患者さんの闇を引き受ける役割なので、世間的にタブーとされる領域にも踏み込んでいかなくてはならない、ということを踏まえてこの話を読んで頂きたいと思います。
 この社会で語るのをタブーとされている領域、それは「死」と「性」です。とくに「性」については学校教育で語られることが少なく、勉強一本で来た女医たちにとっては馴染の薄い領域であったりします。どんなに社会で男性と同じ役割をこなす女医であっても、自らの女性性を無視するわけにはいかず、それは性の側面で端的に表れます。
 男性と女性とでは根本的に違います。突き進む側と受け入れる側。そして歴史を見てもわかるように社会や家庭の垢を引き受けるのが女性であることが多いのは、その性の結びつき方にも由来していると思うのです。つまりその行為において男性を受け入れる側の女性は、目に見えないエネルギーのようなものをすべて体のなかに受け入れてしまうのでしょう。
 とくに更年期前後にうつになる多くの女性は、そのほとんどすべてが夫に不満を抱いています。夫とは個人格ではなく夫の家系を含むすべてのエネルギーです。繰り返される性行為において、それらのエネルギーが女性の体のなかに浸透していきます。そしてそのエネルギーがきつく重かった場合、受け入れる側の女性の器がいっぱいいっぱいになった時、女性にうつが発症するのではないだろうかと思ったのです。それならばその以前にも、行為のあとに不快感とか体が重くなる感じがなかっただろうかと聞いてみると、必ず皆さん夫とのセックスにそのような不快感を持っているのです。
 これをきつい役割を背負う女医に置き換えて観ると、大変なことになります。日々の責任ある労働、夫の世話、夫の家族の世話、子供の世話、この疲れが積もり積もって更年期前後の女医は不幸にして重度のうつ状態や健康を害することが多いのです。社会的に力のある女医の多くは苦労を背負うことを使命感のように感じていることも多く、軌道微調整や修正をすることなく突っ走り、ある時に突然倒れる、ということも多いものです。
 これまで長々と何を言いたいのかとお思いになった方もいらっしゃると思いますが、つまり世間知らずの女医の卵の時代に「男性の選び方」というものを知らせておくことも必要だと思うのです。どんなに主義主張に共感でき尊敬できても、男性と交わるということは危険もはらんでいます。女性はかなりのエネルギーを受け入れ、そして吸われます。しかし恋愛時代には、それがのぼせ上がってわからなくなっています。だからこそ体の結びつきの時、よく自分の感覚を確認することが大事です。
 つまりセックスのあと体が重くならなかったか、肌が荒れなかったか、やる気が起きなくなって行動範囲が狭くなってこなかったかなどです。ともすればそういった感覚が気楽さと混じって起きるときがあるので気をつけなければいけません。それがある場合には多くても3回で行為をやめておくことが適当だと思います(3回というのは、男性の側に女性に対して愛着が湧くギリギリのラインらしいです)。
 体の相性が悪いというのは、一緒になってから往々にして女性の側に抑圧が生まれることが多いものです。体の相性よりもっとおおきな結びつきのエネルギーがある場合はよいのでしょうが、長い夫婦の歴史を紡ぐためには、決してこの相性は無視できないと思うのです。男女間の体質のバランス、家系のバランス、などなど目に見えない要素が絡み合って体の相性というものが起きてくるのではないでしょうか? 昔から言うではありませんか、肌が合う、合わない、って。
 まったく根も葉もないことと笑う前に、有能なバランスの取れた女性医師の活躍を育てる場を育成するためには、そんな教育も陰ながら必要であると感じる今日この頃です。女医はその女性性を仕事の場で生かすことができます。いわゆる母性の医療、とでも言いましょうか。それで救われる患者さんも多いのです。
 しかしその前に、どんなに患者さんに元気を吸われても、丈夫な心と体を手に入れなければなりません。そしてその基本になるのが家庭です。明るい笑い声がたえない家庭があれば、疲れても回復は早いものです。希望を持ちながら働くことができます。せっかくの働き甲斐のある女医という職業なのですから、メンテナンスを怠らず生き生きと働きたいものです。そんなことを望む女医さんや女医さんの卵さんたちに、私の考えが少しでもお役に立てれば幸いです。