青山 晃子

女医のつぶやき

 いつもと変わらぬ午後の紅茶、もとい午後の診察。保育所帰りの母子が多い。
 水痘に罹患した児の母親が、子供の看病で会社を休むために自身が勤める会社に提出する診断書を書いて欲しいと来られた。約1週間程度で水痘も治り保育園に行けるだろうとの予測で、そのまま「約1週間の自宅療養を要す」と記した診断書を渡した。
 数日後、その母親が、はっきりとした日付を入れたものでなければ受理できないと会社から言われたので診断書を書き直して欲しいという。水痘と診断した日付は記入してあったのだが、約1週間という書き方がよろしくないとのこと。幸い、その時点では水痘の治癒傾向がはっきりしていたので、「何月何日から何日まで」と自宅療養期間を明記し診断書を訂正した。
 ところが、また数日後、「要介護」という言葉が診断書になければ家族看護休暇とされないのでもう一度書き直して欲しいのですと、とても申し訳なさそうに来られた。会社の担当の人からのE-メールのコピーを添えて。担当は女性社員。メールは業務連絡だから仕方ないのか、当然なのか、淡々として冷たい。水痘に罹患した子は2歳である。一人で自宅療養できるわけがない。「要介護」に決まっている。最初に提出した時点で、診断書の一番望ましい形を伝えられていなかったのだろうか。いろんな可能性や背景が考えられたけれど、いずれにしても小さな子供を抱えて仕事をする女性の大変さを思いやる優しさを感じなかった。
 そして私。中学一年の息子と小学三年の娘がいる。息子の中学校のクラス役員をしている。仕事を続けながら子育てをして、恥ずかしながら初めて引き受けた役員である。どこかで一度は保護者としての義務のようなものを果たしたかったのと、働いている母親は学校任せで無責任などと言われたくなかったのが本音である。午前診察と午後診察の合間の数時間をやりくりし、夫と交代で役員会に出席していた。
 先日、一年間の慰労と懇親をかねての昼食会が開催された。とあるホテルのレストランでウィークデイのど真ん中の午前11時30分から。もちろん私は(夫だって)欠席である。とても出席したかったというわけではなかったけれど、学校行事の手伝いを通じて仲良くなった方もいたし、不覚にも少し淋しい気持ちがした。やっぱりここは私の居場所ではない。
 ため息つきながらも立ち止まれない、子持ちの働く母親たち。
 土曜の午後、私は勉強会のはしごで走る、走る。今日の最後は高津尚子先生にご紹介いただいた南大阪女医ネットという東洋医学の勉強会だ。講師は土方康世先生。3時間超の濃い中医学講義の間、新参者の私はテキストの漢字にひたすら読み仮名をふっていた。情けない。
 開業医になってから、それまで気になっていた東洋医学や西洋の漢方と言われるアロマセラピーを勉強し始めた。西洋医学で凝り固まった頭を解きほどき、新たな概念を組み入れるのには戸惑いもある。が、くじけない。引き出しは多いほうがよいから。
 時代は緩やかならせんを描きながら次の段階へ進んでいると感じている。