ドリンク剤

 今年の3月中旬。インフルエンザの流行が遅くまであり、おまけに特効薬とされていた治療薬について様々な見解が出され、診察に、検査に、説明にと多忙な日々であった。
 昼に公務のあったある日、午後の診療が終了したのだが、まだ書類整理などの残務があり、長時間残業になる気配がして仕方なく駅前のコンビニへと走った。駅前のコンビニは少々狭いが、駅を利用する人や周辺のサラリーマン、OLがよく利用していていつ行っても混んでいる。そのせいかお客さんがぶつからないように一方通行になっていて、床には黒いテープで順路まで記してある。
 夜遅くなりそうなので、できるだけカロリーの少ない葱がたっぷり入ったそばとミネラルウォーターを籠に入れた。そして最後の一品、売れ行きの良いハウスのドリンク剤の「○○○の力」を取ろうとした。その時、スッと私と同じ年齢くらいの男性の手が視界に入った。彼が手にしたものは同じハウスの「うるおい○率」であった。思わず私と彼は目が合ってお互い苦笑いをした。ちらっと見た彼の籠には一人分のお弁当しかなく、紛れもなくそのドリンク剤は彼が飲むもののようであった。「普通、逆ですよね……」お互い目でそう語り合った気がする。気のせいか彼の肌のつや、張りのよさが感じられた。勿論彼がこの後、職場に戻って残業なのか、あるいは帰宅してゆっくり食事なのか、そこまではわからなかったが。
 労働安全衛生法による過重労働が法的に厳しくなり、多残業者の面接が厳しく言われているが、現在のところそれは労働者であり、個人事業主は当てはまらない。開設者である開業医は自分の身は自分で守らなければならない。仕事の時間や睡眠時間、食事の管理、心身の健康、そして少し憂鬱になるけれど老後の生活のことまで。それから忘れてはならない、女性としてのお手入れも。明日からしばらく私も同じハウスのドリンク剤である「うるおい○率」に替えてみようかな……、そう思った。