尊敬する先輩、二宮文乃先生とセミナーでご一緒して

 9月19日、二宮先生とご一緒に、「第16回大阪漢方談話会」(小太郎漢方主催)で、アトピー治療に関するセミナーをすることになりました。先生は皮膚疾患のことを私にいつも懇切丁寧に教えてくださり、先生と生徒が一緒に講義をする感じがして、はじめは気分的にちょっと引けてしまいました。
 そこで思い切って二宮先生に、
 「先生、ご一緒にセミナーと言われましたが、するからにはちゃんとした物にしなければいけませんね。てんでバラバラにするより何か関連づけた方がよろしければ、タイトルを御教示頂けませんか」
とお願いしたところ、
 「私は『エキス』のアトピー治療の話をするから、土方さんは『煎じ』のアトピー治療をしたら?」
とアドバイス下さいました。
 さて症例が集まるやらどうやらと危惧しましたが、それなりに集まり、グラフ化してみると、なんとか形はできました。うまく行った症例ですから理由があって効いてるのですが、日常臨床では「うまく行って当たり前」で、そのまま行き過ぎてしまい、検討することはほとんどありません。
 しかし切羽詰まって検討分析すると、新たな事実がわかってくるのには驚きました。うまく行った症例の検討をやらずじまいで進んで行くということは、新事実をどんどん捨てて行くことになるのだと実感し、「よくぞ二宮先生がアドバイスして下さったこと!」と感激いたしました。
 これも女医どうしの遠慮のない本音で話し合える仲なればこそです。もし男性医師の場合には、別に嫌な方でなくても、きっと私は二宮先生に対するようなお願いはしなかっただろうと思います。
 もう一つ驚きましたのは、大阪市大の皮膚科の助教授の小林先生が、お忙しい合間をぬって出席して下さり、会食にまでつきあって下さったことです。この方は超多忙で、お休みの日は倒れて寝てられて当たり前というのに、休息を犠牲にして、開業医の講演を聴きにきて下さったのには、尊敬の念を禁じえませんでした。小林先生も日常診療で随分ご苦労されてこられてるようで、ざっくばらんな興味をそそられるお話を色々して下さいました。
 二宮先生がお若い頃、患者さんから「あんた本当に医者か」と言われたり、朝9時から夜11時まで手術をして、すんだら術後患者の回診をして、寝るのは午前3時──それも寝るところがないので外来のベッドで──、7時には起こされて朝の診察に向かうという日々、あるいは患者サンプルのホルマリン漬けから切片切り、染色、検鏡、写真をとり現像するところまで、すべて自分自身でしなければならなかった日々──それも無給の上に、月謝まで払って──というお話には本当に驚き呆れ、感心しました。その苦労が先生をして、年齢を感じさせないパワフルなオーラを発する人にしたのでしょうか?
 しかし又驚かされたのは、小林先生がサンプルの切片切りから現像まで全部ご自分でされていたというお話でした。云十年の年の差はあるはずのお二人が、まったく同じ苦労をしているという事実に驚きました。
 現実とはそういうものかもしれません。
 だからこそ、70代から30代までというメンバーが一堂に会して、遠慮なく、本音で話し合えるのでしょう。もちろん最年長の二宮先生が、ざっくばらんで、他者のことを思いやるお人柄であることは大きな要因です。
 われわれは幸せです。お手本にする先輩女医と身近に接することができるのですから──。
 ふと周りの女性医師を見回すと、皆さんそれぞれに困難な状態を引きずりながら、ニコニコ楽しそうにしておられるのです。女性医師はこれで良いのだ、このスタンスで進んで行くのだ。そして情報交換を密にして、助け合って行くことが、女性地位向上に直結しているのだと、心から感じました。