メタボ・キャンペーンの裏で奮闘する現場

産業医、産業看護職、企業人事労務、保険組合などが「さんぽ会」に集結し、率直に意見交換

参加者数今年度最多の6月月例会
 15年の活動実績を持つ「さんぽ会(http://sanpokai.umin.jp/)」(会長:住吉右光氏)月例会に、6月19日、今年4月から開始された特定健診・保健指導に関する情報交換のために産業保健現場のあらゆる職種が集まった。この日の月例会は約130名と今年一番の参加者数となり、発言者、聞き手ともに真剣な面持ちで、2時間あまりを過ごした。
 さんぽ会(産業保健研究会)は、1993年、順天堂大学医学部公衆衛生学の研究会として発足して以後、職域での多様な健康問題について、現場の健康管理スタッフの勉強・意見交換等に貴重な交流の場を提供し続けてきた。
 現在同会の事務局長を務める福田洋氏(順天堂大学総合診療科)は、6月下旬の産業衛生学会でも「多職種産業保健スタッフのネットワーキングを通じた経験、努力、エビデンスの共有」と題したさんぽ会の活動において同学会奨励賞を受賞している。
 この日は、まず5月に実施したアンケート結果を報告、引き続いて、健康保険組合、事業所、健診等の委託業者の立場から話題提供者として参加した7名が、フロアの参加者とともに現状を報告し合った。

メタボ健診開始直後のアンケート
 今回のアンケート回答者97名のうち、61%が企業に勤務しており、保健師が52%、管理栄養士1%のほか、医師歯科医師21%、看護師16%、事務系・運動系で各1%を占める。6割強が、特定健診・特定保健指導について188ページにわたって詳述された「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」をひと通り読了しているものの、研修についてはほぼ同数が未受講であった。
 特定健診については、「すでに行っている」が3割強、約4割が年度内実施予定。保健指導については、実施がまだ1割強で、被保険者については「(階層化された)対象者全員」「優先順位をつけて行う」「未定・検討中」が約2割5分ずつあり、「希望者を中心に」が約1割。被扶養者への保健指導は、4割強が「未定・検討中」だった。
 メタボ対策としてのポピュレーション・アプローチ戦略は、半数以上がパンフレット配布等の情報提供やウォーキングキャンペーンを実施しており、歩数計等のグッズ支給、朝礼や講演会などで労働者に自覚を促している。
 特定健診については、4割近くが「制度そのもの」や「デジタル化」を問題点として挙げ、「被扶養者の受診率の低さ」、「マンパワー不足(他の業務との兼ね合い)」、「腹囲の妥当性」がいずれも3割近くに及んだほか、受診券発行などの事務手続き上のトラブルなどが挙げられた。
 保健指導の問題点は、4割弱が「マンパワー不足」を挙げており、「支援スキルとフォローの困難性」、「メンタルヘルス疾患等メタボ以外の疾病の扱い」が、3割超でこれに続く。
 自由意見では、喫煙対策やメンタルヘルス対策、がん検診など従来力を入れてきた保健指導の先細りを懸念する声や、外部の委託業者との連携法、人間ドックとの兼ね合いをどうするか、などが挙がった。
 新たに検査項目に加わって医学的なエビデンスが何かと取り沙汰される腹囲については、「健診の流れに組み込んだ」「心電図と一緒に測定」など、受診時の大きな混乱もなく、全般にほぼスムーズに受け入れられたとみられる。
 5年後のアウトカム次第では、後期高齢者医療支援金が加算されるペナルティが保険者に課される(かんもしかわら版詳報08年1月30日号参照)が、すでに「ペナルティを辞さない」覚悟の健保もあり、保健指導に対する負担感の大きさが窺える。

条件は各所各様、悩みは共通
 一部には特定健診以前から、健診受診者にすべて個別の保健指導を実施していたり、社員食堂にヘルシーメニューを取り入れている企業もあるが、階層化システムがまだ機能していない、全社員への周知が不徹底など、開始にあたっての条件はばらついている。ただし、一様に顔をしかめるのがシステムの問題。
 健診データは、医療保険者や事業所、外部委託業者の間で電子的に受け渡しすることとされているが、階層化を含むデータ・システム上のトラブルが全国各地で確認されており、スムーズな運営にはまだ時間を要する見込みである。このほか、メタボが疑われた受診者がメンタル面で問題を抱えている場合の対応や、健診や保健指導の委託先の実力のみきわめも、共通の課題となっている。
 集合契約においては、特定健診受診のために受診券が必要となるが、その発行がスムーズに行かないことや、健診内容が大きく変わったことが周知徹底されておらず、これまでに地域で受けた基本健診が受診できないとの苦情が一部の健保に寄せられるなどのトラブルもある。
 メタボ健診をリスクマネジメントの視点で考えると、最終的には保険者責任となるため、健診や保健指導を外部委託したとしても、委託先に責任転嫁することはできない。ポイントを稼ぐことよりも、真に効果を上げ、メタボに隠れる重大な疾病を見逃さない工夫が必要で、多くの専門職は実施に抵抗感をもっている。
 目標達成に向けては、委託業者が労働者の働き方や食事の取り方に至るまで可能な限り社内事情を理解することはもちろん、健保など保険者と健診・指導の委託業者、事業所人事部等を含めた関係者すべてが連携し、協力すること。まずはこの認識の一致が不可欠という声に、参加者は深く頷いていた。

     ※厚労省では、同省サイト上で定期的に特定健診・特定保健指導に関するQ&A集(http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=129003)を更新しており、6月27現在、下記のように、実務上の細かな質問が寄せられている。 ○ 腹囲が基準内であっても、内臓脂肪100平方cm以上の者の取り扱いは? ○ 検査項目に欠損があった場合、階層化はできるか? その場合、特定健診を行ったとみなされるか? ○ メタボの判定のない健診結果や、腹囲・メタボの判定なく、階層化に必要な質問票のない場合は? ○テレビ・インターネットを介した保健指導は初回面接、個別支援とみなされるか。