保健指導における「保健師のアイデンティティ」とは?

保健師活動と能力継承のために必要なもの
───全国保健師職能集会でキャッチフレーズとともに確認

「みる つなぐ うごかす つくって みせる」をキャッチフレーズに
 五月二十二日、日本看護協会総会において全国保健師職能集会が開催され、平成20年度活動方針および19年度の活動報告、保健師を取り巻く現状と問題点について、さまざまな角度から討議が行われた。
 各地の活動報告では、「お茶と元気が出ます」で住民を集わせ、「らくらく体操」を地域に浸透させた鹿児島や、昨年の公衆衛生学会開催地・松山から、イラストで見る保健師のリアルなイメージなど、会場を沸かせる発表が続いた。

 「保健師が業とする保健指導検討会報告」では、保健師・保健指導をキーワードに136の文献を抽出したところ、2004年以降に急増していることがわかった。また、平成19年5月18日に「保健師が業とする保健指導」について、214名の参加者を23グループに分けてディスカッションして集められた561ワードを、継承すべき保健師の能力としてすでに挙げられてきた「みる」「つなぐ」「動かす」を基に検討したところ、保健師業務の内容であるコーディネート、ヘルスプロモーション、行動変容、住民参加、フォロー等を反映した下記5つに再分類できた。

(1)みてきいて ――― 生活の場に出向して個人・家族の生の声を聞く、ケアの必要性、将来の見通しを予測する、地域をみる
(2)つないで  ――― 人と人、人と社会資源、個と集団、集団と集団をつなぐ、相互理解
(3)うごかす  ――― 行動変容、地域の活性化など
(4)つくって  ――― 環境整備、支援体制づくり、住民組織育成など
(5)みせる   ――― 個人・家族・地域が変化した結果を見せる

 これらから保健指導は、原点を家庭訪問に置き、常に予防的視点を持った「保健師活動の総体」と結論づけられた。相手がニーズを感じていなくとも、保健師にとっては地域住民のすべてが顧客である。「顧客第一主義」を掲げ、自らが自分の足で歩き、地域に入り、人としての心を伝えることが、「みて きいて・つないで うごかし・つくって みせる」の本質であるといえる。
 一方で、保健師活動における問題点のひとつに、「みせる」ための手段が不足していたことにより、業務内容の表現と伝承が充分に行われてこなかったことも反省点として上がった。今後は、紙芝居や標語・川柳などを用いて、保健師の仕事をアピールし、地域社会に理解されるための努力が全国の現場で求められる。

「能力」と「連携」が現場共通の悩み
 保健師活動を巡る主な問題点としては、下記の3つが挙げられた。
1)保健師の大量退職を意味する2007年問題
2)市町村合併と介護予防・福祉重視による保健師の分散配置
3)看護基礎教育と資格要件
 1)と2)は全国に共通の課題で、ベテラン保健師流出で世代交代が加速する中、保健師ならではの能力継承が充分にできないこと、体系的な若手育成のための指導の時間がなく、指導不足の中で活動せざるをえないこと、地区担当制ではなく業務分担制の比率が高まることで地域全体をみる目が養われないことなど、地域全体での現任教育および能力継承システムの構築が不可欠とされる。
 業務担当制については、視点の共有がない中での地区診断のむずかしさに加え、ニーズ把握や現場を見据えた企画調整能力の獲得の困難さ、ともすれば保健師が孤立しがちな状況を生むことも問題視されている。
 3)の看護基礎教育は、実習先確保に苦慮する教育側と、学生の履修レベルや意欲のばらつきによる受け入れ側の負担と困惑など、双方に悩みがあり、教育そのものの内容充実が不可避であるとの見解が示された。

6つのテーマでグループワーク
 グループワークでは、保健師活動の基盤整備に関する内容を取り上げ、今年3月22日に設立された保健師連絡協議会の発起人集会で提言された6項目について討議された。
 保健師連絡協議会は、三月二十二日、看護協会、全国保健師教育機関協議会、全国保健師長会、産業保健師活動協会、公衆衛生看護研究会の5団体が参加して発足した。保健師の専門性を発揮できる活動基盤強化と力量形成のための仕組みを、相互に協力して組織的に取り組むことを目標としている。継続的に種々の課題検討や、実践者育成事業も行っていく。

1 地区担当を可能とする保健師の確保
 業務分担制では、地域全体が把握できない。保健師が生き生きしなければ住民も生き生きしない。保健師は住民の声と住民との一体感に育てられる。アンテナを高くしてネットワークをつくる必要。

2 統括保健師の配置を実現しよう
 災害時のガイドラインには、統括保健師が明記されている。そのほかの活動においても、分散配置を補うために、横のつながりを重視し、部分だけではなく全体をもみられる統括的ポジションが必要。

3 産業保健師の強化
 特定健診・保健指導が開始され、現場は混乱している。メンタルヘルスへの取り組みも含め、密な情報交換の場が必要。

4 保健師の現任教育の充実
 新人保健師を指導できる中堅の管理職が育っていない。保健師連絡協議会などでもいろいろな情報共有の必要がある。

5 看護系大学で保健師教育を卒業要件としていることの撤廃
 学生の実習意欲が低く、コミュニケーションが確立できないため、実習受け入れ側の負担が大きい。4年の教育を受けて1人で訪問できる能力が身いていない。保健師の離職も増えているように思われる。保健師の資質を大事にするために丁寧に育てたいが、現場の業務が多忙で充分にできない。4年に加え、2年の教育を上乗せする必要があるのではないか。

6 看護師要請4年、保健師養成上乗せ2年の教育体系を
 賛成多数。4年+2年ではなく、統合カリキュラムそのものを見直すべき。その上での2年延長が必要。助産師にはある卒業時の技術目標が、保健師ではまだ確定していないことも問題。実習に充分なモチベーションのない学生を、制限のある中で指導するのは大変。目的意識をもって保健師になりたい人材を育てる、また「なりたい」と思うような教育が必要。

    <参考文献> 平成20年度職能集会検討資料(日本看護協会 保健師職能委員会) 日本保健師連絡協議会発起人集会趣意書(平成20年3月22日) 保健師の2007問題に関する検討会報告書(平成19年3月) ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの効果的な融合に向けて(平成19年11月)