安保免疫論の新テーマ~ミトコンドリア・パワーの謎

がん患者の体温と血流の研究で解明

 新潟大学の安保徹教授が提唱する免疫論は、自律神経作用を基盤に、薬や負荷の高い治療からの脱却を呼びかけている。三月二十日、千代田区で行われた「がんとどう向き合うか――がん患者のための特別講演会」(伊豆予防代替医療センター主催)において、ミトコンドリアのがん治療に及ぼす効果が明らかにされた。

●心身の無理ががんを引き起こす
 多くのがん患者の調査にもとづき、がんの発症が心身にきわめて高い負荷がかかることから起きるとする安保理論では、がんからの脱却は、生活を見直してストレスから逃れることであると明快に主張する。
 安保教授の研究から明らかにされたのは、がんという病が、能力の限界を超えた長時間労働や極端な夜更かしなど高いストレス環境下に長期間身を置いているか、職場や家庭で心に深い悩みを抱えて生きている人に発症しているという事実である。
 このような過酷な生き方は、医学的には交感神経緊張状態と表現される。交感神経緊張状態では、白血球中の顆粒球が増加し、体内の常在菌と反応して炎症を起こすため、口や胃、大腸の粘膜がただれるほか、歯周病などがみられ、女性では子宮内膜症、卵巣膿腫などを起こす。一足飛びにがんになるケースがさほど多くないとすれば、これらの症状を、「がんの前ぶれとみて注意しなければならない」と、安保教授は指摘する。

●血流障害→低体温→細胞の異常増殖
 交感神経は、人間の活発な活動を支える一方、過度の緊張は、血管収縮から血流障害をきたす。このため、さまざまな病気において交感神経緊張が体温低下を引き起こしており、とくにがん患者では健康な人(36・0~37・0℃)より低体温(36・0℃近辺かそれ以下)が顕著で、エネルギーが落ちた状態にある。
 血流が抑制された状態では、炎症を起こした組織修復も困難である。破壊された組織は、悪条件の中で分裂を繰り返す。これが細胞のがん化である。本来、細胞の分裂は、厳密な制御機構のもとで行われ、無制限には行われない。ところが、供給されるべき血流が途絶えた状態では、この制御機構が働かず、細胞が異常増殖することががん化に関連する。
 自律神経のうち副交感神経が支配する白血球中のリンパ球比率が30%以上あれば、がん細胞を排除することができるが、自律神経バランスが交感神経に偏って、リンパ球比率が25%を切れば、そこには「がんの芽ができる」(安保教授)という。

●酸素不足とミトコンドリア
 今年になって、低体温の弱点が明らかになった。酸素不足がそれである。これは、細胞内で酸素を使って大量のエネルギーを生成するミトコンドリアの機能が抑制されていることを意味する。
 ミトコンドリアは、細胞内小器官で、ひとつの細胞内に最低百個(心臓、脳、筋肉には数千個)存在し、電子伝達系で酸素を用いて大量のエネルギー産生に寄与する。安保教授は、「二十億年前、人間の細胞は酸素のない状態で分裂していたが、その頃酸素大好きなミトコンドリアが寄生してくれたおかげで、もっと大きなエネルギーをつくれるようになった。同時に、細胞分裂を抑制する遺伝子がもちこまれた」とし、「がんは悪者の細胞ではない。ミトコンドリアの機能が抑制されて、われわれの細胞が先祖返りして分裂過剰になったもの。いわば、一種の生き残り戦略として細胞ががん化している」と述べる。
 低体温のがん患者では、このミトコンドリア機能の抑制が認められる。血流不足、酸素不足でエネルギー産生が低下しているために、顔色は悪く、疲れやすい。さらに、蛋白質合成もスムーズに進まないため、皮膚の弾力は低下し、筋肉の収縮能は落ちる。
 このミトコンドリアを活性化させることができれば、種々の症状に大きな改善がみられるのではないか。
 
●ミトコンドリアを元気にする
 がんを含む種々の病気治療に高い効果を上げるのは、からだを暖めることである。
 深部体温(直腸温)を39・5℃に上げるような入浴法の実践が、伊豆予防代替医療センターでがん患者の治療に効果を上げているという。
 普段の生活で行える方法としては、
 1.入浴による体温上昇(41℃の湯に約三十分)、2.体操で筋力を強化し、内部から体温を上昇、3.電磁波によるミトコンドリアの活性化がある。3.については、玉川温泉(秋田)や三朝温泉(鳥取)のように、ラジウム放射能の存在する温泉の効能に代表され、日常生活では、日光浴によって赤外線や紫外線を適度に浴びることが勧められる。
 もうひとつの手軽な方法は、「野菜を摂ること」(安保教授)。野菜に含まれるカリウムの中に、ごく微量ミトコンドリアを活性化するものがある。野菜と果物には、肥料として窒素、カリウム、リンが与えられている。意識的にこれらを摂ることがミトコンドリア機能を活性化し、体内のエネルギー産生を促すのに効果があると考えられる。このほか、玄米や発酵食品を取り入れると、体内pHが調整され、便の腐敗もなくなる。
 安保教授は、血流障害に拍車をかける抗がん剤等の治療に反論し、人間の自然のメカニズムを重視する姿勢を崩さない。
 「がんは悪者じゃない。ある患者さんは、がん細胞を『過酷な生き方を教えてくれた命の恩人』と呼んで、がんに向かって『ありがとう。無理したおかげでつくっちゃってごめんなさい。せっかくできたんだから、すぐ消えなくてもいいよ』と声をかけている。
 がんがよくなったどうかの指標は、腫瘍マーカーでもサイズの退縮でもない。からだがぽかぽかして、顔色がよくなって気分がいいか、便の腐敗が減ったかなど、自分で気づくことができる」と締めくくった。